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他人の正解を探さない

小学校1年生の6月、「学校の給食」をテーマにした絵画賞で金賞をとり、私の絵はその夏から数年間、市役所の廊下で飾られていた。

受賞した絵は何のアイデアもなく、ただの猿真似で描いた絵。
授業の前に担任が前年度に授賞した作品をクラス全員に見せ「このようにダイナミックな絵がいい」と言うので、クライアントを満足させるために腕を振るっただけなのである。

毎日毎日描いていたお姫様のドレスの絵は封印して、給食の割烹着を着せたし
睫毛いっぱいのキラキラお目々はやめて、白目と黒目を描き分けた。
友達が持っていて喉から手が出るほど羨ましかった蛍光ピンクのクレヨンのことは忘れて、先生がよく着る服と同じ白と緑を画面いっぱいに使った。
両手をそっとドレスに乗せるお姫様じゃなく、10ヶ所くらい関節のある躍動感のある腕を画面いっぱいに描いた。 

全ての選択の基準は『担任の先生の好みかどうか』
ただそれだけ。貰った材料を合わせただけ。

大人の期待に応えて適当なタイミングに適当な正解を出すと褒められるので、狙い通りに成功したことは多少嬉しかった。その後何年も同じように他人の正解を探すやり方で成功体験を積んだために、長いこと、この思考法に呪われた。

そんなことを30年も経った今振り返って苦い気持ちになっているのは、今月から息子のあーちゃんがアメリカの公立校で小学一年生になったからだ。
アカデミックカリキュラムのウェイト増え、正解・不正解の世界に直面するようになった息子を見守りながら、頭の片隅で絵画コンクールで金賞を取った自分のようにならないといいな、と不安になっていた。

先日PTA総会なるものが息子の小学校で3年ぶりにオフラインで開催され、私は初めてアメリカの小学校の中を歩いた。とにかくカラフルだし担任の先生ごとにクラスルームに置いてあるものが違うのも面白い。

先生から色々説明してもらいながら歩いていて、特に面白いと思ったのは、壁にかけられた紙のチェーンだった。与えられた紙で制限時間内に長いチェーンをチームで作ろう、という内容の授業でできたもの。紙の輪っかは最初が太くて、だんだんと細くなっていく。これは制限や制約を観察してチームメイトと話会ってゴールに向かう練習なのだそうだ。
大体のチェーンはこんな形をしている。

細長い紙の方が効率が良いことに気づくと、次に生徒たちは制限時間を気にし始めてチーム内で役割分担を始めるそうだ。各チームメンバーが一本づつチェーンを作って最後に繋げるチームもあるし、紙を切る人・テープを切る人・輪にする人、と流れ作業を作るチームもあるらしい。

こんな授業をしてるなんてびっくりした。紙の輪っかでチェーンは私も小学校のお楽しみ会などの飾りで作ってたけど、手芸の領域だったのできれいに均一に作る方が正しかった。

担任の先生は一定の時期までに全員が一定のレベルに達するべきというジャッジは設けていない代わりに、自分が出来ることを一旦考えることと友人を巻き込んで問題を解決する力を育てたいと話していて、私が小学校時代を過ごした頃とは場所も教育方針も違うんだと思った。

息子の学校を眺めて、自分の中に長年染み込んだ他人の正解を探す思考に向き合いたい気持ちが強くなった。アメリカで自分はマイノリティだからと否定ばかりせずに、愛を持って集団主義の国で生まれて育った自分の思考をマネージできるようになりたいと思った。

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