うさ耳の彼を思い出してしんみりしちゃう夜
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うさ耳の彼を思い出してしんみりしちゃう夜

こんにちわ!

最近、よこせさんのムーンチェイサーPIGPENなど偶然にも動物のかぶりもの系のマンガを読むことが続いたので、思い出したことがある。

実生活でも動物のかぶり物をしている人は1エリアに1人、もしくは1時代に1人は必ずいたな、ということ。

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高校時代は新宿タイガーがいた。 

イギリスの美大に通っていた頃はうさぎの耳(以下:うさ耳)の彼がいた。

ブリュッセルでのルームメイト(女子)は猫耳ヘッドフォンだったし

現在は息子がしばらく(2〜3歳にかけて)リスの耳をつけていた。

私も小学校4年生の頃クマの耳をつけて登校していたので、そういった動物化ファッションもわからなくもないし・・・動物の耳に関わらず、アクセサリーというものは長くつければつけるほど自分と一体化して、うっかり家に忘れたりして外に出るととても心細くなる。だから今日も動物になる。(人間だけど)タイガーもうさぎも猫もリスも、そんなお洒落の一部のはず・・・

しかし、うさ耳の彼だけは様子が違ってた。

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うさ耳の彼は大学に通っていた間、ずっとこの格好をしていた。

大学に入る前からこの格好をしていたのかは知らないが、4年間は春夏秋冬この格好をしていた。

私はファッションテキスタイル科で、うさ耳の彼はファインアート科だったので、同じ授業を受けることはほぼなかったが、写真の現像などをする暗室があるスタジオでよく会った。

暗室というのは、真っ赤か真っ暗のどっちかしかない部屋で、狭くていろんなものが上から吊るされてるし、夏は暑いし、かぶり物とロングコートを着れるような場所ではないので、暗室でうさ耳の彼を見かけた人は皆「脱ぐかな?」と一瞬期待するけど、待っても待っても脱がない。

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一度うさ耳を上から吊るされている写真かライトにひっかけてスタジオのテクニシャンに叱られていたから、日々の生活には多々、支障があったはずだ。

ちなみに、うさ耳の彼が撮っていた写真はロンドンや周辺の都市の街並み。わざわざ目立つ格好をしているのだから自分のポートレートかと期待したが、ただ真面目に真面目な写真を撮っているようで意図はわからなかった。

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こうして1人でランチを食べている姿をよく見かけた。

大学のスタジオの前にワゴンで来るバゲット屋さんが私も大好きだったから、同じ列に並んで注文した。タイ風チキンカレーのバゲット。マンゴーやカシューナッツも入ってて美味しいのだけど、パンがやたら硬いのでよく口の中が傷だらけになった。(でも美味しい)

バゲットを食べてるうさ耳の彼の姿が遠目からはニンジンをかじってるように見えるのは想定内だと思う。

うさ耳の彼にとっては「なんでそんな格好してるの?」なんて質問も想定内のはずだし、「いつ脱ぐの?」「替のうさ耳はいくつ持ってるの?」「実家にもそれで帰るの?」などなど聞かれているはず・・・

だから私は聞かなかった。

うさ耳の格好についてはツッコまずに、スタジオで会った時は写真撮影の場所や夜景を撮るためのレンズの話などをした。それほど会話は弾まなかった。

それからだんだん、日々の風景の一部に溶け込んでいった。


卒展で展示した、うさ耳の彼の作品を私は今も忘れない。

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この姿が↑そっくりそのままの形で展示してあった。

あまりにも精密な作りで、一瞬、今まで見ていたのも全部人形の方だったんじゃないかと疑ったし、「やっぱりツッコミ待ちだったんじゃねーか!!」と悔しくなった。

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ルネ・マグリットのゴルゴンダという作品は微妙に顔の違う男たちが個性を消して同じ格好をし集団という幻の都を描いたものだが、うさ耳の彼の4年間はこのマグリット作品へのオマージュだったというのが、展示物に添えられていた冊子に書いてあった。

ほぼ同じ格好をしながら山高帽をうさ耳に変えたら、ゴルゴンダでマグリットが描いた「平均的な目立たない人間」にはならないが、うさ耳という異質なアイテムを合わせて生活することで日常の中にマグリットの「現実世界の裂け目」を演出しようとしたのではないかと・・・知らんけど。私はそう読み取った。

卒展の数日間、うさ耳の彼の人形の展示はされていたが、彼自身は卒展の間ずっと姿を見せなかったので、人形ではなく、剥製なんじゃないかという説があった。

数ヶ月後の卒業式にも彼の姿はなかった。(卒業式は、あの四角い帽子とガウンを着るから、彼が居ても誰も気づかない)

今週になって急に、彼のことが気になったので、あらゆるキーワードをタイプして検索エンジンにかけてみたが何も出てこなかった。やはりあのアートは大学生活限定のものであったんだと思う。

貴重な体験をありがとう・・

と改めて思ったし、うさぎ耳の彼がいたからこそ、感量深く読めたマンガもある↓

特に「後ろの二階堂」という作品に私はうさ耳の彼を重ねました。話せばよかった。誘えばよかった。騙されてやればよかった。大学生活で出会えた貴重な人物のことをよく知れる機会を逃してしまったことを、しんみり後悔しちゃいました。

いつか彼をモデルにしたキャラでマンガを描いて、うさ耳人生の物語を妄想したいです。

1日1装ふりかえり

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SNS向け漫画もそうではないマンガも、毎週火曜日に一旦このアトリエで先に読めます。 コミックエッセイに加え、長編漫画のラフやプロット・キャラクターデザインも、何度も描き直すマンガの1稿、2稿、その思考プロセスやチームメイトとの作戦会議など、るびーのアトリエ内での創作活動、ほぼ全てがここにあります。 作品が表舞台でスポットライトを浴びる前の姿を最終チェックまで話せます。

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