名作リメイク愛と4月のこじらせ二次創作
子供達の春休み期間中とても疲れていたように見えたようで、家族が私を丸一日1人にしてくれた。
時間はあっても身体が思うようにアクティブになれず、1人でフラッと映画館に入ってみるのだが、なんの前情報も知らない映画を観るとか・・久しぶり過ぎて、それが黒澤明の『生きる』をイギリスを舞台にリメイクした『Living』だとオープニングが始まるまで気づかなかった。
10代の終わりに黒澤明の『生きる』を観た。
中学レベルの英語力でイギリスの美大に進学したせいで四苦八苦していた頃、ホームシックも重なって、なんでもいいから日本語が聞きたいと大学の図書館で数少ない日本映画を手当たり次第借りて観ていた時期に出会った名作映画。
それから20年近く経って、ビルナイの『Living』で記憶が蘇る。
『生きる』の舞台だったカフェは、イギリスだとティールームで、酒場は、プーリマスの海岸なんだ。わかる。印象がよく似てる。
1年を通して雨がよく降るイギリスは、空気に水分が多く含まれているせいで風景の彩度が低くグレーかかっているので、カラーで撮っていても元のモノクロ映画の風景のまま。
末期の癌を患った老人の主人公と20歳になる前の自分の記憶が映画の中で重なって、映画が終わるころには号泣してしまった。
名作は時間を超えて帰ってきてくれる。
今回はイギリス版になって会いにきてくれた。
人生の折にまた『生きる』に再会できる日がくるかもしれないと思うと、嬉しい。
そういえば、リメイク、アップサイクル、リユース、リサイクル・・・
なにがどう違うんだっけ?いつかググろう。
数日後、今週末のイースターランチの準備のために食器を選ぼうとしていた。『Living』のお葬式シーンで使われてた鮮やかなターコイズブルーの食器が綺麗だったのを思い出していた。
私がアメリカに来てから集めた食器を並べてみると、『Living』の世界観のようなシンプルなものは無かった。全部・・南国シノワズリだ。派手なんだ。
アメリカで暮らしてても日本食がメインだし、イギリス食も切り離せないし、ベトナム料理にハマって10年くらいだし、近所にはブラジル料理、メキシコ料理など、和洋折衷どころじゃない我が家の食生活に似合う食器は南国シノワズリ柄が多くなったのだ。
元々は17世紀中頃、ヨーロッパの貴族や富裕層の間で大流行した、家具、陶磁器や壁紙などに使われた中国風のデザインの総称、シノワズリ柄。
ハリウッドリージェンシースタイルで人気だった柄なのでアメリカにはとても多い。
あ、そうだ。『ラマン』があった!
南国シノワズリ繋がりで連想して、広げた食器を早々に片付けて本棚に向かった。
黒沢明の『生きる』に出会ったのと同じ頃、姉が『ラ・マン/愛人』の文庫本を大学の寮まで国際郵便で届けてくれたことを思い出した。
独特な文体で語られる物語に夢中になってすぐ、90年代に撮られた映画も見た。小説も映画も素晴らしい。
悲恋の物語なので、全編通して主人公の2人はこんなふうに笑顔で戯れあってないし、湿気と黄色い砂埃が舞い散ってるのでトロピカルで鮮やかな場面なんか無いんだけども・・二次創作してみたらどうだろう、と思ったら楽しくなってしまった。
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